k​.​TAMAYAN - そ​れ​が​彼​女​の​特​徴​だ​っ​た​。

from つ​く​ポ​エ vol​.​1 by つくばポエムコア同好会

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lyrics

行方不明になった少女を探すべく、
俺は旅に出ることにした

罰ゲームのように短いミニスカート
それが彼女の特徴だ。

パンティーがほとんど丸見えになっている。

そんな彼女が姿を消したのは去る12月2日だった。
俺と彼女には特に接点はない。
街中で彼女の行方を探すポスターを見かけてこの旅を企画したのだ。

俺は無職童貞35歳。彼女は18歳の女子高生。
ある意味では俺の方が不審者なのかもしれない。

ポスターに載っていた彼女の写真をスマホで撮影し、
聞き込みを開始する。

俺は探偵ではない。聞き込みなど、やったこともない。
だが、どうしても彼女の行方を知りたかった。

「この女の子を見かけませんでしたか?」
「んー、手羽先」
聞き込みを開始するがこれといった手ごたえはない。
返ってくるのはクソリプのような返事ばかりだ。

手元のエイフォンセブンを開くと、マックバレンが俺に微笑んでいた。
俺はなんとなく、鍛冶屋の親父に電話をかけた。

「おっさん、今人探しをしてるんだ」
「ああ、蒲田んとこの息子か」
「18歳の女子高生で、罰ゲームのように短いミニスカートが特徴なんだけど」
「んー知らんなぁ。警察には聞いたのか?」
「警察もお手上げらしい」
「んー。じゃあ、諦めたらどうだ」
結局、何の収穫もなく通話は終わった。
やはり、諦めるべきなのか

気が付くと浜辺に立ち尽くしていた。

「俺はどうしたらいいんだ。父さん…母さん…」
「(第9の鼻歌)歌はいいわね。歌は人々の心を癒してくれる。人類が生んだ、文化の極みだわ。
そうは思わない? 蒲田研太くん」
俺の隣に立っていたアラサーくらいのOLが声をかけてきた。

「なぜ、俺の名を?」
「知らないものは居ないわ。あなた、アラサー女子の憧れだもの」

そんな話は聞いたことがない。

「それより、俺は人を探してるんだ」
俺は写真を見せる。

「じょ、女子高生!? うわあぁぁ」
アラサーOLは泡を吹いて倒れてしまった。
キラキラに輝く女子高生はアラサーにとって毒物だという事をすっかり忘れていた。

まわる羊
よこしまなサンマ
霞が関のペンギン

誰も少女の事を知らない。
足の長いタコ娘が、無邪気な笑顔を振りまく。

ずいぶん遠くまで来たような気がする。
ポケットに入れていた煙草も空になってしまった。

途方に暮れていると、俺に声をかけてくる男が現れた。

「君が探している女の子、見たことあるよ」
男は冬だというのにボクサーパンツ1枚だ。

やばいやつだと思いながらも、少しでも手がかりが欲しい俺は話を聞くことにした。
男の話によれば、彼女はつくばシティのボロアパートの前でスマホを眺めていたらしい。

さっそく原付を飛ばして例のアパートへ赴く。
するとそこには掃除のおばちゃんが黙々とゴミを拾っていた。

おばちゃんに少女の写真を見せる。
すると、意外な返事が返ってきた。

「ああ、この子なら最近よく見かけるわよ。いつも誰かを待ってるみたい」

俺はおばちゃんに礼を言い、そのアパートを見張ることにした。

張り込みを始めて1週間。ついに少女は現れた。
少女はやはりスマホを眺めている。
指の動きからして、ポイッターでも見ているのだろう。
俺は思い切って声をかける。

「あの、あなた、行方不明になってる美代子さんですよね」
少女は驚きの表情を浮かべる。
明らかに引かれている。

俺は少女を安心させるために、事情を説明する。
すると少女は、思いつめたように話し始めた。

「ある人と会う約束をしたんです。でも、会うためには家出をしてくれと言われたんです」
人の事を言えた義理ではないが、彼女と会う約束をしている男はどう考えたも不審者だ。

「早く家に帰った方がいいですよ。その人、絶対怪しい」
俺はそう忠告したが、彼女は耳を貸そうとしない。

「どうしてもその人に会わないといけないんです。私の人生に関わることなんです」
「理由を聞いてもいいですか?」
「私には夢があります。その人と会うことが、私の夢に近づく一歩なんです」
「なるほど。でも、両親には無事であることを伝えた方がいいですよ」
「それもできません。彼との約束なんです」

俺は彼女の熱意に押されて、それ以上の追求はできなかった。
代わりに、彼女に連絡先を教え、何かあったら俺に連絡するように頼んだ。

それから数日。ついに彼女から電話が来た。
約束の人物とついに会う事が出来たらしい。
彼女の身の安全も確保されているようだ。

俺は安堵し、家に帰ってネットの海に身を投じた。
そこで俺は、見覚えのある顔を目にする。

彼女は、イカ王国の王妃になっていたのだ。
ポイッターではその話題で持ちきりになっていた。
フェイスパックのユーザーは次々とイカ王国の国旗をアイコンにし始めた。

俺はその日から、左の鼻だけ鼻水が止まらなくなった。

それから1年。イカ王国は民主派による革命でイカ人民共和国になった。
亡命した彼女の行方は誰も知らない。

俺は6畳のアパートの部屋の隅で、彼女のパンティーの食い込みを思い出しながら泣いた。

credits

from つ​く​ポ​エ vol​.​1, released January 18, 2017
music&lyrics:k.TAMAYAN

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